PMにおける好奇心の重要性と強化方法              竹腰重徳

 プロジェクトの現場では、計画通りに進まないことが少なくありません。予想外の課題や変化が次々に起こり、柔軟な対応が求められます。こうした状況で大切になるのが「好奇心」です。好奇心とは「知りたい」「やってみたい」という気持ちのことです。小さな子供が身の回りのものに興味を持ち、質問を繰り返す姿にその本質が表れています。大人になると、経験や常識から新しい挑戦を避けがちになりますが、好奇心があれば「なぜ?」「もしこうだったら?」と考え、発想を広げることができます。プロジェクトマネジメントにおいても、好奇心は課題解決の糸口となり、チームを活性化し、イノベーションを生み出す力になります。つまり、子供のような好奇心こそが、変化の多いプロジェクトを成功に導く原動力なのです。

1. なぜPMにおいて好奇心が重要なのか
 ・ 問題解決力を高める
  「なぜこの問題が起きたのか」「もっと良い方法はないか」と問いかける姿勢が、新しい解決策を生みます。
 ・チームの活性化
  興味を持って質問や提案をする人がいると、会話が広がり、チーム全体が学び合う文化が生まれます。
 ・イノベーションの源泉
  大きな発明や改善は「もしこうだったら?」という疑問から始まります。好奇心は新しい価値を生み出す出発点です。
 ・変化に対応する力
  技術や社会が変わる中で、好奇心のある人は変化を脅威ではなく「学びのチャンス」として受け止められます。

2.好奇心を強化する具体的方法
 ・「なぜ?」を繰り返す
  表面的な答えに満足せず、繰り返し「なぜ?」と問うことで、本質に近づきます。
 ・新しい分野に触れる
  異なる分野の知識や人と出会うと、自分の専門との組み合わせから新しい発想が生まれます。
 ・小さな実験をする
  大きな挑戦でなくても構いません。新しいツールを試したり、会議の進め方を少し変えたりする小さな工夫が、好奇心を習慣化させます。
 ・失敗を学びに変える
  好奇心からの挑戦は失敗を伴いますが、それを「次につながる学び」と捉えることが継続の力になります。
 ・日常での観察を意識する
 「なぜこの仕組みはこうなっているのか」と日常生活でも疑問を持つ習慣が、観察力と発想力を養います。
 ・マインドフルネスを実践する
 マインドフルネスは「今ここ」に注意を向ける実践であり、過去や未来へのとらわれを減らします。これにより目の前の小さな変化に気づきやすくなり、その気づきが新しい問いを生みます。さらに、会議や対話においても質が高まり、チーム全体の好奇心を育む土壌となるのです。

3.好奇心を育てる環境づくり
 ・安心して質問できる雰囲気
  質問や意見を歓迎する空気があると、好奇心を表に出しやすくなります。
 ・学びを共有する文化
  知ったことを気軽にシェアできると、「自分も調べてみよう」という気持ちが生まれます。
 ・挑戦を評価する
  結果だけでなく「挑戦そのもの」を評価することで、メンバーは安心して新しいことに取り組めます。

4.おわりに
 プロジェクトの成功には計画力や知識とともに「興味の心=好奇心」が必要です。
 ・好奇心は問題解決・イノベーション・チーム活性化を促す
 ・「なぜ?」を繰り返し、小さな実験を重ねることで鍛えられる
 ・マインドフルネスの実践が気づきと探究心を呼び覚ます
 ・組織は挑戦を称え、学びを共有する文化をつくる必要がある
 好奇心は「才能」ではなく「鍛えられるスキル」であり、PMが持つべき最も重要な力の一つです。

参考文献
(1)Francesca Gino、The Business Case for curiosity、HBR、2018
                       HOMEへ