心の健康とプロジェクトマネジメント                 竹腰重徳

  プロジェクトを進めるうえで、多くの人が計画やスキルやリソース管理に注目します。しかし、それだけではプロジェクトの成功は保証されません。プロジェクトの成否を左右するのは「人」であり、人が心の健康を保ち、最適な判断ができるかどうかが非常に重要です。心の健康とは、ストレスに柔軟に対応し、集中力を保ち、良好な人間関係を築きながら、安定した精神状態を維持できること指します。

 心の健康に関して、次の3つの要素が特に重要になります。
① 感情の健康
感情のコントロールができ、プレッシャーやストレスに強いこと
 ・プロジェクトでは予期せぬトラブルや変更はつきものです。感情の健康が保たれていると冷静に問題を受け止め、適切に対処できます。
 ・感情が不安定だと、小さなトラブルで動揺し、焦りやイライラが増大してしまいます。
② 認知の健康
思考がクリアで、集中力・創造力・判断力が高いこと
 ・マルチタスクや情報過多での中でも、必要なことに集中し、適切な決断を下せます。
 ・認知の健康が低下すると、注意力が散漫になり、ミスや誤判断が増えます。
③ 社会的健康
良好な対人関係を築き、チームワークが発揮できること
 ・信頼関係があると、円滑なコミュニケーションが生まれ、協力して課題を解決しやすくなります。
 ・逆に、人間関係が悪いと、ストレスが増え、プロジェクトの進行に悪影響を及ぼします。

 なぜ心の健康がプロジェクトにおいて重要なのでしょうか。
① ストレスを適切の管理できる
プロジェクトには締め切り・トラブル・顧客対応など、多くのストレス要因があります。ストレス耐性が低いと焦りや不安が増大し、冷静な判断ができなくなるため、作業効率が落ち、結果的にプロジェクト全体の遅延や失敗につながります。
② 集中力と生産性が向上する
心の健康が整っていると、目の前の作業にしっかり集中でき、創造力も発揮でき、ミスが減るため、結果的に仕事の質が向上します。逆に心が乱れていると、頭がうまく働かず、作業スピードが落ちることが多くなります。
③ 良好な人間関係を築ける
プロジェクトはチームで進めるものが多く、対人関係がスムーズだと、協力しやすくなるため、プロジェクトの成功率が高まります。逆に、人間関係のストレスが多いと、情報共有が滞り、作業効率が大幅に低下します。

 心の健康を向上させる有効的な方法の一つがマインドフルネスです。
マインドフルネスとは、「今この瞬間」の体験に意識を集中して観察し、評価や判断をせずに受け入れている心の状態を指し、このような心の状態になる訓練により、ストレスの低減、集中力の強化、創造力の向上、思いやりの向上などの効果が科学的に証明されています。プロジェクトマネジメントに次のような効果が期待できます。
・ストレスや不安の低減
 厳しい締め切りや複雑な課題に遭遇しても、ストレスや不安が低減して冷静で適切な判断や行動がとれるようになります。
・創造的な問題解決
 プロジェクトで発生するいろいろな課題を新しい視点やアイデアを生む助けとなり、集中力、創造力を発揮して問題解決ができるようになります。
 ・チーム内の良好な人間関係
 各チームメンバーが思いやりをもって接することにより人間関係が向上し協調して行動するようになります。

 スキルや戦略だけでなく、心の健康を保つことが、プロジェクトの成功につながるという意識を持ち、マインドフルネスをプロジェクトに取り入れることをおすすめします。

参考資料
(1) 厚生労働省、休養・こころの健康
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b3.html
(2) 久賀谷亮、脳疲労が消える最高の休息法、ダイアモンド社、2017


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