メタ認知を高めるマインドフルネス                   竹腰重徳

   メタ認知の「メタ」は「高次の」という意味があります。「認知」は何かの対象を見る・聞く・感じる・覚える・理解する・考えるなどの活動を通して、その対象について理解したり、判断することです。メタ認知とは、自分の認知活動(知覚、感情、記憶、思考、判断など)を、より高い視点から客観的に捉え、評価した上で、コントロールすることです。

 身近にあるメタ認知の例として、あなたが誰かと会話しているとき、つい別の考え事をしてしまい、相手の話をうわの空で聞いていました。その時「まずい、会話をしているのに別のことを考えてしまった。」と思ったら、それがメタ認知です。「考え事をしている」自分を客観的に気づいています。会話中に別の考え事をしてしまった自分に気づくことができれば、会話に集中するように意識をすることで、相手に失礼ないように行動をコントロールできます。このように、メタ認知能力があれば、自分の状態や行動に気づき、よりよい行動を取ったり、対策することが可能になります。

 メタ認知能力の高い人は、自分のことを高い視点から客観的に観察・分析できるので、適切な判断ができます。人は誰でも偏見や思い込みで間違った判断をしてしまうことがありますが、メタ認知能力の高い人は自分が持つ偏見や思い込みに気づきやすく、正しい判断ができます。また間違った判断をしてしまってもそれに気づいて修正することができます。自分の感情や状況を客観的に見ることができるので、その場の雰囲気や気分で物事を決めたりしません。冷静に対応することができるのです。
 メタ認知能力の高い人は、自分の言動を客観的にみることができ、自分の言動が人にどう受け取られるのかを推測できるので、人と適切な関係を結ぶことができます。また、空気を読むことができ、場面にあった態度を取ったり発言をすることができます。さらに、もし対人関係でつまずいても、自分の行動を振り返り、相手に不愉快な思いをさせたのであれば謝罪したり、行動を改めたりできるので、大きなトラブルの前に対処できます。
 メタ認知能力の高い人は、自分の得意なこと、不得意なことを客観的に判断できるので、得意なことを生かして成果を出したり、不得意なことを克服するために対策を練って努力をします。

 メタ認知能力の低い人は、自分を客観的に見て分析したり、行動をコントロールすることが苦手なので、思い込みが激しく独りよがりの判断をしがちなります。また、自分の行動が他人からどのように見られているかという発想が持ちづらく、他人に対する思いやりも欠けがちで、人と良い関係を持つことが難しくなります。
 メタ認知能力の低い人は、自分の得意・不得意を客観的に判断できないので、得意なことを生かしたり、不得意なことを努力してできるようにしたりすることが難しいのです。

 高いメタ認知能力を持った人は、以下のようなスキルを発揮できるといえます。
  ・状況判断が冷静にできる
  ・問題の適切な対応ができる
  ・よい人間関係が構築できる
  ・感情をコントロールできる
  ・コミュニケーション能力高い
  ・学習意欲が高い

  メタ認知能力を高める方法として、マインドフルネスがお勧めです(1)。マインドフルネスは、「今この瞬間」に自分の内外に起こっていることに注意を向け、何も評価せず受け入れ、ありのままに気づくようにする心の訓練ですが、第三者的に自分の心を捉える訓練でもあるのです。もう一人の自分が第三者的に高い視点から客観的に自分に注意を向け、何も評価せず受け入れ、それに気づく訓練を繰り返して実践することにより、心が客観的に物事を捉え、冷静で適切な対応ができる心の習慣が身についてきます。

参考資料
(1)Sarita、Mindfulness: A key to improve metacognitive skills、International Education & Research Journal、2017


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