マインドフルネスで得られるスキル                     竹腰重徳 

 マインドフルネスの提唱者のジョン・カバットジン(マサチューセッツ医科大学教授)は、「マインドフルネスとは、現在という瞬間において、価値判断を加えることなく、意識的に注意を払うことである。こうすることで大きな気づき、明瞭さ、その瞬間の現実への受容力が養われていく。現在という瞬間には、その存在を認めて尊重しさえすれば、魔法のような特殊の力が秘められている。それは、誰もが持っているかけがえのない瞬間である。私たちが知らなければならないのは、現在という瞬間だけである。現在という瞬間だけを知覚し、学び、行動し、変え、癒さなければなりません。だからこそ、『瞬間瞬間を意識する』ということがとても大切になってくる」と述べています(1)。

 私たちは、日々マインドフルネスな過ごし方をして、現在という瞬間を注意深く目覚めて気づく実践を継続することにより、心が冷静になり、直観が働き始め、起こっている事柄が明確に見えるようになり、的確な判断ができるようなスキルが身につきいてきます(2)。それは、プロジェクトを進めていくうえだけでなく、日常生活にも役立ち、すばらしい成果をもたらしてくれます。

1.気づき
  今この瞬間に発生している現象に対して、自分の内部で起こっている感覚、感情、思考を客観的に認識でき、そして相手の気持ちや現象のまわりの状況を冷静に読み取ることができるようになります。
2.集中
  今この瞬間に発生している課題に集中できるようになります。集中が増すことにより気が散ることが少なくなり、マルチタスクが減り、生産性向上やストレス低下につながるようになります。
3.ビギナーズ・マインド
  物を見るときにあたかも初めての出会い、好奇心、オープンな気持ちで物を見るようになります。過去の経験に囚われた先入観ではなく、歪んだレンズではなくクリアな眼で見ることができることにより、斬新なアイデアや知恵を呼び起こすことができるようになります。
4.受容
  ありのままの現象をそのまま受け入れるようになります。嫌な現象に対してもいやな感情を抱いたり、起こっている事に抵抗したり変えようとしたりせず、まずはその現実を受け入れるのです。それがよい意思決定や次の学習につながります。
5.洞察
  物事の本質を明晰に見抜くようになります。マインドフルネスを実践すると世の中の事象は原因と結果に基づいて生じているという知恵がつき、そこから創造性やよい意思決定ができるようになります。
6.思いやり
  他者の苦しみをなくしてあげたいという優しい気持を育むようになります。他者に共感して他者の悩みや苦しみの感情や原因を理解して進んで手助けをするようになり、結果として他者からの協力が得られるようになります。
7.平静
  今起こっている現象にすぐ反応するのでなく冷静に対応するようになります。よい状況に舞い上がったり、悪い状況に対しては衝動的に行動したりせず自分を冷静にコントロールできるようになります。
8.相互依存関係
  あらゆる物事は、他から切り離されて単独であることはなく、人間や自然など多くのことが相互に関係しあい依存しあって存在しているのだと理解できるようになります。それが、気づき、思いやり、洞察、感謝につながります。
9.感謝
  人は自分一人では生きていけません。空気、水、食料、また家族や職場の人たち、さらには社会など、自分を取り巻くあらゆるものに支えられて生きていることを理解すれば、恩恵を受けているものすべてに感謝の念がどんどん湧いてくるようになります。それにより大きな喜び、楽観、幸福を感じるようになり活動のエネルギーとなります。
10.無常
  すべての現象(自然現象、身体、心、人工物)は、瞬間瞬間に変化しています。それを無常といいます。世の中の現象は固定しているものでなく絶えず変化するものだと理解することにより、変革への可能性を見出すことができるようになります。

参考資料
(1)ジョン・カバットジン、マインドフルネスストレス逓減法、春木豊訳、北大路書房、2007
(2)Laurie J. Cameron、The Mindful Day、National Geographic、2018

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