成長マインドセットとマインドフルネス           竹腰重徳 

 マインドセット(mindset)とは、ものの見方。物事を判断したり行動したりする際に基準とする考え方で、経験や教育、その時代の空気、生まれ持った性質などから形成されていきます。

 モチベーション研究のパイオニアとして知られるスタンフォード大学キャロル・ドゥエック教授は、教育心理学者として、能力は同じでも結果に差が開いてしまう子がいるのは、なぜなのか、という疑問から20年以上にわたり調査・研究を重ね、人間のマインドセットには「成長マインドセット(growth mindset)」と「固定マインドセット(fixed mindset)」の2種類があることをつきとめました。そして、学業、芸術、ビジネス、スポーツ、恋愛、人間関係など、あらゆることで成果を出せるかどうかは、「その人の心の持ちよう、すなわち、マインドセットが成長マインドセットであるかどうかで決まる」と結論づけたのです。

 成長マインドセットは「自分の能力は努力によって改善していくことができる」という考え方であり、固定マインドセットとは「自分の才能、資質、性格は持って生まれたもので、変えることはできない」という考え方です。
 成長マインドセットの人は能力を伸ばせると考え、努力こそが人を賢く、有能にしてくれるのです。
 ① 挑戦-新しいことにチャレンジしたい
 ② 障害-壁にぶつかっても耐える
 ③ 努力-努力は何かを得るために欠かせない
 ④ 批判-批判から真摯に学ぶ
 ⑤ 他人の成功-他人の成功から学びや気づきを得る
 固定マインドセットの人は、人の能力は生まれつき固定的と考え、努力をしても成長しないので意味がないと考え努力をしようといないのです。
 ① 挑戦-できればチャレンジしたくない
 ② 障害-壁にぶつかったらすぐにあきらめる
 ③ 努力-努力は忌まわしい
 ④ 批判-ネガティブな意見は無視する
 ⑤ 他人の成功-他人の成功を脅威に感じる

 ドゥエック教授は、「人間の脳はまだ神秘に包まれており、知能や脳の働きについてはわかっていないことがたくさんあります。知能というと、人間には頭の良い人、普通の人、悪い人がいて、一生そのままだと思っている人が大勢いますが、最近の脳科学の研究でそうではないことがわかってきました。脳は、筋肉と同じく、使えば使うほど性能がアップするのです。新しいことを学ぶと脳が成長して、頭が良くなっていくことが科学的に証明されている」と述べています(1)。つまり、生まれつき変わらないと思っていた知能が努力によって伸ばせることは、脳科学的に立証されているのです。

 ただ、マインドセットは生まれたときからの経験や教育、その時代の空気、生まれ持った性質などから形成されますので、一度染みついた固定マインドセットを成長マインドセットに変えることは難しいのです。それを変えるためには、瞬間瞬間の自分を観察し、失敗をしたときでも、感情的にならず、それを冷静に受け止め、失敗から学ぶようにしていく必要があります。マインドフルネスの実践は、そのための方法として大変有効です(2)。マインドフルネスの実践は、瞬間瞬間の自分の内外に起こっていることを明確に観察して、受容、明晰、冷静、忍耐、平静、集中などの能力を上げてくれます。それを継続することにより、どんな困難な時でも感情的にならず、忍耐強く冷静に対応できるようになり、成長マインドセットが培われていきます。

参考資料
(1) キャロル・ドゥエック、マインドセット、今西康子訳、草思社、2016
(2) Betsy Hanger、Develop Growth Mindset with Mindfulness Practices、2018



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